2009.11.05 Thu
父の小話

ある日の夕食時、父がカレーを口いっぱい頬張りながら娘に言った。
父『ほーいえばこのあいら、ふはに会ってよほ』
娘『ふーん…』

娘『なななんですと!?』
知り合いにばったり会ったくらいのテンションだったので、思わず聞き流しそうになった娘。
カレーが冷めてゆくのも気にせず、事の真相を詳しく聞くことにした。

その日、父は芽を連れ、家から少し離れた場所の川原沿いを散歩していた。
前を行く人は誰もおらず、後ろにはベビーカーを押す女性のみ。秋風が心地よい昼下がり、のんびりと歩いていたその時。
前方遠くから、黒い物体がこちらへ向かって来るのが見えた。芽が興奮し出したので、犬をフリーにさせているのかと、危険回避のため、リードを短く持って構えた。
ところが。
(何かヘンだ…)
迷いもなくこちらへ向かってくるその黒い犬の信じられない大きさに驚いた父。
次の瞬間、

父『奥さん!ウマだ!ウマが来るぞ!』
奥『キャー!ウソーッ!』
ベビーカーと奥さんを庇いながら、歩道の隅に退避したその横を、悠然と走る馬一頭。
あまりの突然の出来事に、しばし呆然とする2人。

父『ウマ…、でしたよね?』
奥『そ、そうでしたね』
たてがみをなびかせて去ってゆく馬を見送っていると、今度は人間が2人、全速力で向かってきた。
ニンジンを持って。
2人は馬以外目に入っていないらしく、父の方には目もくれず、必死の形相で馬を追いかけて行った。

父『馬主…、ですかね?』
奥『そ、そのようですね』
ニンジン片手にバトンリレーの練習でもしているのかとも映る滑稽な姿に失笑し、怖かったですねホント驚きましたなと一時の安堵もつかの間
注)画像は全てイメージです。父『奥さん!またウマだ!』
奥『キャー!ウソー!』
ニンジンの誘導作戦も効果がなかったようで、Uターンして戻ってくる馬、その後ろからはやはり全速力の馬主が2人。
「いやもうホント大丈夫ですから〜!」と父に言い置き、後を追う馬主ら。
誰がどう見ても大丈夫じゃない光景を前に、警察に連絡するか悩んだものの、面倒な事に巻き込まれたくないと、怖かったですねホント驚きましたなとそのまま父は
後日、新聞等では報道されていなかったので、無事に馬は馬主の元に戻ったようです。
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